オイスターシェル(牡蛎)のカメオは僕も27年間で2度目ですから、ほとんどの方がご存じないのではないでしょうか?
ヴィクトリア時代中期から後期にかけてカメオの一大ブームが起こると、シェルカメオが大量に作られ、粗製濫造の粗悪品も作られるようになるのですがこのオイスターシェル・カメオはそれよりも前のジョージ4世時代(1820年頃)に作られた極めて希少価値のあるミュージアムピースと言える作品です!!
牡蛎の貝殻は、普通のシェルカメオに使われるヘルメットシェルより極端に小さくて薄いですから彫るのがとても難しく、それに適した大型の牡蛎というのも少ないのです。この画像では大きな物と思われるでしょうが、たった2,7cm×3,2cmのとても小さなカメオなんです。
オイスターシェル・カメオの特徴は、地の部分(濃いグレー)が極端に薄く、その為それを補強する意味でスレート (粘板岩の薄板)の上に置いて表面をガラスでカバーしてあることです。ガラスのカバーはかなり湾曲した平べったいドーム型の物で、これはこのカメオの為に特別に作らせた物です。これは意外にお金が掛かることですから、この事からも当時、このオイスターシェル・カメオが如何に高価で貴重なカメオであったかが解ります。地の部分(濃いグレー)に色むらがあるのはその為ですし、
外側に白い縁を彫り残してあるのも強度を考えてのものなんです。一見、地模様があるように見えて不思議な感じです。
モチーフもオイスターシェルの持ち味が生きるキューピッド&プシュケと言うのも良いですね〜♪
キューピッドが奏でる角笛のメロディーが聞こえて来るような楽しい作品です。やはりヴィクトリアンのカメオとはひと味違う魅力がありますね。
これがもしかして最後のオイスターシェル・カメオになるのかなあなんて思っています・・・。
【古代ギリシャ神話「エロス(キューピッド)とプシュケ」】
三人姉妹の末娘。
あまりの美しさにアフロディテが嫉妬心を燃やす。アフロディテは息子エロス(キューピット)を送り、ある醜い豚飼いに恋をするよういいつけた。しかしエロスは誤って、自分の胸を、恋の矢で傷つけてしまった。プシュケに恋したエロスは、彼女を自分の住処に運び、結婚した。
神が人間と結婚するためには、その姿が人の目に見えないようにしなくてはならない。人間は神の火に打たれて死んでしまうから。
プシュケは夫の姿を見たことが無いが、すばらしい宮殿に住んでいた。夫は朝になると去っていった。
彼女は姉たちを呼び、彼女の幸せな様子を見せた。姉たちは彼女に夫が、恐ろしい怪物ではないか、など疑惑の念を持たせることを言った。
プシュケは疑念でいっぱいになり、ある夜、エロスが眠っているとき、ろうそくに火を灯し、夫の姿を見てしまう。夫は今まで見たこともない美しい青年であった。しかし、ろうが夫の肩に落ち、エロスが眼を覚ましてしまう。
エロスはプシュケをじっと見つめた。怒りはなく、深い悲しみと憐れみの表情であった。プシュケは気を失ってしまった。
プシュケが目覚めたとき、城も中庭もなく、雑草の中であった。夫とともにすべて消えてしまった。彼女は森の中をさまよいあるいた。
伝説では夫が彼女を許し、彼女をオリュンポスの山へ連れていったという。そして花嫁と花婿の身内のものが、おせっかいなおしゃべりを封じるのが彼女の仕事となった。
相手を疑い、自分で見届けるのが一番、とか百聞は一見にしかず、などと言っている連中に姿を見せずに近づき、「愛だけが愛する人の秘密を知る、信じることは見ることなのよ」とささやくということである。
「ギリシア神話小事典」(社会思想社 教養文庫)